【まとめ】コーヒー値上がりの理由 直近の理由から過去4年分を振り返ります

本記事をご覧頂き有難うございます。大阪でコーヒーの業務用卸(生豆・焙煎豆)、小売り製品の製造をております、アラブ珈琲株式会社の西埜元成と申します。
2025年10月から色々な食料品が値上がりとなりましたが、コーヒーに関しても大手メーカーをはじめとした関係会社がレギュラーコーヒーやインスタントコーヒーの値上げを発表しております。本記事ではコーヒーが値上がりしている理由と経緯を簡単に説明したいと思います。
目次
直近の値上がり理由について
コーヒーの値上がりは2021年7月以降何度も各メーカー行われているのですが、直近の理由としては『アメリカがブラジルに50%の関税をかけた』ことが要因です。
当初私はアメリカが関税をかけることによって、アメリカでコーヒーを使用する方々は『ブラジルのコーヒー仕入価格がめっちゃ高くなるぞ!代用品さがさなアカンなぁ!』と他生産国のコーヒーに切り替える動きが活発になり、その分ブラジル産のコーヒーが安くなるのではないかと考えています。
しかーしこの考えは甘く、ブラジルの代用としてアメリカから近く関税も低い中米産のコーヒーの流通量が大量に動くこととなりました。これによって世界的な在庫水準を示す『認証在庫』が減少します。
この動きを見た投機筋(ファンド)は、『これは相場荒れそうやなぁ?俺らは実際にはいらんけども、先々高く売れそうやから今のうち買っとくか!』という動きが活発になり、アラビカ相場価格は史上最高価格を更新するほど上昇しています。

コーヒーに関係する業者全般が『まさかこんなことになるなんて・・・。』と今思っています。私含めこの値上がりを正確に予期できた人はいないでしょう。相場価格が上がると生産農家も『まだまだ相場あがりそうだし売らへんで』とか『そないな数では売りまへんでぇ!』と強くでてくるので、結果在庫が少なくなる→争奪戦が始まる→価格があがるという負の連鎖が始まります。
今後相場が下落する最たる要因は、10月1週目に行われるブラジルとアメリカでエラいさん同士の関税に関する協議内容。ここでもしアメリカ『さすがに50%はやりすぎたスマン』ブラジル『ウチのコーヒーないとキツいやろ?年間800万袋(アメリカでのブラジル産コーヒー年間使用数)出せる国なんかあらへんのやから』とフレンドリーな内容で進んでもらえれば、関税の緩和につながり→中米産コーヒーの使用量が減少→認証在庫数が徐々に増加→投機筋『あれ?儲から無さそうやから売るか』という流れから相場下落につながる可能性もあります。
コーヒーがこんなに値上がりしている理由
コーヒーの値上がりは2021年1月以降から始まっています。順番にご説明します。
①2021年7月 ブラジルで産地が凍結
コーヒー価格の値上がりは2021 年から始まりました。2021 年7 月末に大生産国ブラジルにて産地の一部が凍結する『霜害』が発生し、生産量の減少が懸念されたためコーヒー相場価格は急上昇します。

②2021 年10 月 値上がり要因が重複
その後も、ブラジルでの減産、コロナによる流通遅延、エチオピア紛争、ウクライナへの侵攻による情勢不安、エネルギー価格の高騰といった様々な要因から相場は上昇を続け、相場価格は上昇前の2021 年4 月に対して2 倍近い250¢/lb まで上昇します。

③2023 年3 月 ロブスタ種の減産
コーヒー生産量の30% 程を占めるロブスタ種の主要生産国であるベトナム、インドネシアで天候不順によって生産量が減少。またコーヒー農家の減少(他作物への転換)が進み、相場価格が急上昇。これまでアラビカ種の取引価格の60% ほどで取引されてきたロブスタ種でしたが、同等の価格まで値上がりします。

④2024 年1 月 相場の急騰、農家の売り渋り
ロブスタ種の相場価格に引っ張られてアラビカ種の価格もさらなる上昇がはじまり、2025 年の2 月まで上がり続けることとなります。また、相場価格の高騰によってコーヒー農家は『さらに相場があがるまでは売らないよ』『それぐらいの数量じゃ売れないね』とかなり強気な態度を取るようになり、生産者と購入者のパワーバランスはかなり変わりました。取引価格の上昇以外にも『そもそも物がない!』という状況も相まって、取引価格はさらなる上昇を続けます

⑤2024 年9 月 ブラジルでの旱魃(かんばつ)
1 月以降、相場価格は上昇を続けます。さらにブラジルでは生産地での雨量が少なく産地で旱魃が発生したため、来期以降の生産量が減少するという懸念が発生します。この情報からアラビカ種は一気に急騰し、2024 年12 月には過去最高値である320¢/lb を超える歴史的な高騰状態となります。

⑥2025 年2 月 史上最高値を日々更新
12 月に過去最高値320¢/lb を超えた相場価格は2025 年2 月には400¢/lb を超えます。投機筋(ファンド)の参入、生産農家の売り渋りによって国際相場価格はこれまでにない高値で2025 年5 月まで推移します。

このような流れでコーヒー相場は上がり続けております。
為替推移と理論価格
現在の相場と為替から考えられるアラビカ種の理論価格を示したグラフです。

※理論価格とはアラビカコーヒー相場価格(¢/lb)÷ドル換算(100)×為替(円/$)÷キロ換算(0.45359)というすさまじくアバウトな計算方法によって計算されています。実際にはここに貨物の保険料やコーヒーの種類によってはプレミアム(価格が上乗せ)がつくので、日本に入る通常品のコーヒー生豆価格の目安ぐらいに見ていただければと思います。
まとめ
ここまでご覧頂きありがとうございました。コーヒー相場はここ数年これまでに体験したことが無い相場感に突入しております。相場価格だけ見るとアラビカ種は120¢/lb→360¢/lb、ロブスタ種は1,500$/トン→5,000$/トンと約3倍の価格変動があります。
これに加えて、2022年3月以降の円安進行が始まり、¥110/$→¥145$となっております。生豆相場の上り幅に比べると小さく見えますが原料価格に与える上昇幅は非常に大きく数円動くだけでも輸入価格は変動いたします。
このような相場高騰×円安×品薄といった状況から値上がり前の2021年1月当時の原料価格から大げさ無しに3倍~4倍近く原料価格は上昇しております。弊社も度々値上を実施させてはいただいておりますが、今後さらなる値上げの可能性は十分にあり、他メーカー様においても同じことが言えるのではないかと思います。
世界的な相場の混乱は、私たちのような業者にとっても大きな試練ですが、それ以上に「日々コーヒーを楽しみにされている皆様にどう届けるか」がやはり第一。今後もコーヒーの魅力を損なうことなくお届けできるよう努力を続けてまいります!
投稿者プロフィール|Author profile

- 西埜元成営業部 部長
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アラブ珈琲株式会社の西埜元成(にしのもとしげ)と申します。
高校生の頃からコーヒーに関わる仕事を始めて早20年。
焙煎豆の挽き売り、生豆商社での経験を活かして生豆販売、
焙煎豆商品の商品設計、焙煎豆製品の製造管理、
自家焙煎店への生豆販売や焙煎サポート 等々コーヒーに関係する
業務に従事しております。
コーヒーに関係する質問や、お店の開店、焙煎方法等で質問ございましたら、遠慮なくご連絡ください。
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