SCAJ2023年 レポート
SCAJとはスペシャルティコーヒー業界関係者が世界中から集まる年に一度のコーヒーの祭典です。
私は21歳学生の頃から16年間毎年欠かさず本展示会に参加し、社会人になってからブースの出店に
携わったこともあります。
9月29日(金)に東京ビックサイトで行われたこの展示会を視察してまいりましたので、
本記事を見た方が実際に行った気になれるように内容を報告したいと思います。
目次
SCAJとは
この展示会は略してSCAJと呼ばれていますが、『SCAJ』とは日本におけるスペシャルティコーヒーの
普及・消費の拡大を目的に設立された団体のことを指します。Specialty Coffee Association of
Japanの略称で『SCAJ』です。本展示会の正式な名称は『SCAJ ワールド スペシャルティコーヒー
カンファレンス アンド エキシビション 2023』なのですが、省略してSCAJと呼ばれてます。
本展示会には以下のような業者が参加します。
・日本に生豆を買ってほしい『海外の生産者・ブローカー』
・日本で生豆を販売したい『生豆商社・小分け販売業者』
・自社のスペシャルティコーヒーを普及したい『ロースター・大手メーカー』
・生豆を焙煎するために必要な機械を普及したい『焙煎機メーカー』
・焙煎豆を抽出するための機械・器具を販売したい『器具・機器メーカー』
・コーヒーに関連するシロップやフレーバーを販売したい『食品メーカー』
などなどコーヒーに関係する様々な業種の方が出展されていますので、コーヒーの最新情報を
アップデートできる場として本当に有意義な展示会であると思います。
以下は来場者数の推移ですが、今年はご覧の通り最初の三日間だけみても来場者数前年比149%と
かなりの来場者数で、会場の熱気が凄かったです。(最終日のラスト1時間ぐらいは入場者を
早く帰らせるためなのか蛍の光を流す代わりに冷房が弱まりさらに激熱でした)
5年前から日本各地のカフェやロースターが集まる『Coffee Village』エリアが始まりましたが、
今回は過去最多の85社が出展ということで、本会場から少し移動した別会場に文字通り
コーヒーの村が出来上がっており、各地でのロースターの発展がうかがえました。
SCAJの回り方(見方)
展示会ではなんとな~くぶらっと見て回るのも良いですが、なにせ出展数が多いので
ある程度自分の中で『今日はコレを見て回る!アレについて聞いてみる!』ということを
決めておいたほうがいいと思います。私は生豆販売業者・焙煎豆卸業者として
参加するのですが、例年以下の様な目的を決めています。
・海外の生産者と話す 普段は自分が購入している商社の人間としかコンタクトがとれず、
産地の情報が本当に正しいものなのか?適正な価格なのか?という疑問を常に持っています。
ここでは産地の生産者と直接お話することができるので、我が社に営業している商社マンが
産地の実情に基づいた情報を流しているのか必ず生産者と直接お話するようにしています。
・様々な業者と名刺交換する 色々な業者様と名刺交換を行うようにしています。その後の
コンタクトがなければ1年間連絡することもありませんが、毎年この展示会でお会いする
ことができ『去年もおあいしましたね~』とお話することができるので色んな業者の方から
色々な情報を教えていただく事ができます。今年は30枚ぐらい名刺を交換しました。
・コーヒーを少量ずつ比較試飲する 生豆商社や海外生産者のブースでは様々な種類のコーヒーが
試飲できます。1つの生産国でエリア別のコーヒーの比較試飲をしているブースもあるので、
風味特徴を見ながら比較試飲することで特徴を捉えることができます。毎年グァテマラのブースや
コロンビア(FNC)のブースではこういった比較試飲を行っているので、ガブガブのんでます。
展示会は最終日に行く!
これは展示会の見方というよりか私個人の考えなのですが、展示会三日目ともなると
出展している人もかなり疲れているためか、初日のように『新規客ゲットだ!』という積極性の
ある接客をしかけてきません。私は洋服を選んだりする時も一人でじっくり見たいタイプなので、
可能なら初日にはいきません。
最終日の良いところとして、各ブースでの説明が最適化されているように思います。
初日・2日目で色々なお客様に説明をしてきているので、説明する内容も無駄を省いた興味を
持たせるキラーフレーズのみを放り込んできます。この洗練されたフレーズだけを聞けるのも
最終日のメリットだと思います。
私は新卒で三菱系の生豆商社に入社し、6年前から家業であるアラブ珈琲に入社しており、
商社関係や器具・食品関係、自家焙煎店のお客様など含めると本会場では100名以上の知り合いと
お会いすることになるので、来場者も少なくなって時間のある最終日にゆっくりお話できるのも
3日目に行く理由の一つです。(ただし今回は来場者数が多く全然ゆっくりできず)
視察感想 生豆編
世界中から生豆生産国、生豆販売商社が集まる本展示会では世界中のコーヒーが集まります。
様々な生産国で話を聞きましたが、特に印象的だった以下3か国にまとめます。
ブラジル生産者から聞いたこと
ブラジルでの今年の収穫はほぼ終わったで。今年はかなりのバンパークロップ
(収穫量が高い)になってん。去年ぐらいの相場感やったらめちゃくちゃ儲かってんけど、
今この相場やん?もうちょいあがるかな~と思ってしばらく売らんかったけど、
売り時逃がしてもしょうもないから少しずつ売ってるで。
コロンビア生産者から聞いたこと
エルニーニョ現象ってあるやろ?あれで気温があがってもうたせいで、
虫(ブロッカ)が発生しそうなんや。虫食い豆の被害が大きくなると収量も落ちれば、
品質も悪くなるからちょっと怖いで。あと、日本も円安で値上がりエグいらしいけど
最近のコーヒー相場下落に加えてドルペソ高が進行していて取引価格がかなり
安くなってきていて農家の利益が薄くなってるのよ・・・。
インドネシア生産者から聞いたこと
豪雨のせいで2年連続で出荷価格が高くなっとる・・・。昨年は2年前から15%ぐらい
生産量減ったけど、今年はさらに15%ぐらい減ってる。ここ数年農家もセミウォッシュ
(スマトラ式のこと)のほうが高く売れるから、これまでバリとかフローレス島とかで
フリーウォッシュ作ってた農家はどんどんセミウォッシュにシフトしとる。
だからインドネシアのウォッシュドは今後めちゃくちゃ高くなんで?
スマトラ島以外の産地ではコーヒーの樹に直接日光が当たらないようにシェードツリーとして
マンダリンオレンジを育てているんやけど、この樹からとれる実が高く売れる割には
手間もかからないので、農家がコーヒーじゃなくてマンダリンオレンジの栽培に積極的になっとる。
今後もっと価格も高くなるし、生産量も少なくなると思うで。
生産者から聞いたこと-まとめ
いずれの生産国でもここ数年のコーヒー相場上昇を受けて、利益の取れる2年間ではあったけど
現在の少し下落した相場状況や、生産状況からコーヒー生産者が他食品の栽培に切り替えるのでは
ないかと心配している様子でした。
ちなみに私は英検2級を取得しており、大学はスペイン語学部を卒業しているので産地の人間とはベラベラ!
コミニケーションも楽勝! というわけではありません。お話ができる商社の方をつかまえて通訳して頂いたり、
日本語のお上手な生産者の方とお話させていただきました。言語が拙いにも関わらず産地の状況を懇切丁寧に
説明してくれた生産者の方々に感謝申し上げます。
生豆販売業者が続々と増えている!
私が初めてSCAJに参加した時は日本でコーヒー生豆を販売する生豆商社である
MCF(三菱系)、日本珈琲貿易、石光商事、ワタル、兼松、アタカ通商、
外資系ではE-COM、Volcafe、Olamなどなど名だたる企業様が出展していました。
ここ数年では上記の会社に加え、生豆を少量から販売する小分け業者様も出展するようになり、
私が確認しただけでも生豆小分け販売業者様は8社は出展していたと思います。
以前までの生豆の商流は輸出業者➡商社➡小分け業者➡焙煎業者という流れでしたが、
輸出業者➡小分け業者➡焙煎業者という商流も多くなっており、より生産国との連携を
行う『ダイレクトトレード』を謳う業者も増えているように感じます。
小分け生豆の販売会社が増えているということは、1kg~5kgぐらいの焙煎機を持った
ロースターが増えているということなので、人気の程がうかがえます。
視察感想 焙煎機編
ロースターのはしくれとして展示されている焙煎機はひじょうに興味深いです。
実際に使用していないので焙煎機の特徴や性能等に関しては何とも言えませんが、
リンクを貼っておきますので、ご興味がある方は検索してみてください。
※機械名・メーカー様名に誤記載があるかもしれませんがご容赦願います。
①~③ BESCA
④~⑤ GIESEN
⑥~⑦ JOPPER
⑧ aillio
⑨ YOASANO ROASTER
⑩ カフェロスト PRO/SMARTシリーズ
⑪~⑬ PROBAT
⑭ EASYSTER
⑮ Bach Kaffee Roster
⑯ HCR-12K(ハマ珈琲)
⑰ NOVO
⑱ Behmor2000AB PLUS
⑲ Kaleido SniperM2
⑳ 珈琲考具ロースター
上記以外にも数社ほどあったのですが、写真がございませぬ。。すみません。
ある程度大型の機械になると『自動化・記録』の機能が搭載されており、タッチパネルが
当たり前のように付属していることに進化を感じます。
視察感想 器具編
職務内容からどうしても生豆や焙煎機に注目してしまうのですが、ここ数年で様々な
抽出器具や粉砕機がでているとしみじみ感じます。
私が初めてSCAJに行った2008年では
『生豆本来の品質を楽しもう!』『もっと産地の事を知ってくれ!』という、
スペシャルティコーヒーの普及を主体としたものという記憶があるのですが、
現在ではそこに加えて、『そのコーヒーを美味しく・安定して飲むにはコレだ!』という
抽出器具・粉砕器具・抽出機器に関連するブースもかなり多くなったと思います。
コーヒーの抽出器具によって、粉の使用量、蒸らしに使用する湯量、蒸らしを何秒で注ぐか、
蒸らし後の第一注湯を何秒で何CC入れるかといった抽出メソッドを説明するブースもあったり、
『粉砕機に使用する刃の種類や形状によって、粉砕速度・粒度の均一性・微粉の発生量を
コントロールしなければ本来の味わいは引き出せないぜ?』というブースもあったり・・・。
焙煎機でも申し上げましたが、抽出機器に関しても自動化・簡易化が進んでいるようで、
昨今の人手不足からより安定、より簡単にという機械が多くみられました。
視察まとめ
まだまだ語りきれていないのですが、以上でSCAJ2023の視察感想とさせていただきます。
コーヒーの生産から1杯のコーヒーに至るまでというFrom seed to cup をこの会場で
体感することができます。私は本展示会のマワシモノでもなんでもないのですが、
コーヒーの仕事に従事する1人としてはとても有意義な展示会です。
ご覧いただきありがとうございました!