コーヒー相場価格高騰、円安により原料高騰中。2021年1月からの相場高騰推移をまとめます。
こちらの記事では2024年5月末時点でのコーヒー相場推移について記載します。
また、コーヒー相場高騰が始まった2021年1月から現在までをまとめております。
弊社もそうですが、度重なる原料高騰で値上げせざるを得ないコーヒー関係者の方に、
コーヒーの相場・値上がり要因を理解したい方に、少しでも参考になればと思います。
目次
値上がりの発端 2021年1月~
コーヒー相場の価格高騰は2021年1月より徐々に上がり始めます。
もう3年も前のことなのですが、その時は「すぐ下がるでしょ!」と楽観してました。
コーヒーの大生産国であるブラジルは2021 年度は収穫量の少ない「裏作」にあたるため、
生産量の減少が見込まれており、さらには降雨期にあたる2020 年10 月に降雨が不足したため、
収穫される数量が少なくなるのでは?という懸念からアラビカコーヒー相場は少しずつ上昇します。
緑色のグラフはアラビカ種の相場推移で、単位はセント/ポンド(左軸)です。
¢・・・セント 1USセント=0.01USドル
lb・・・ポンド 1ポンド=約0.45kg
茶色のグラフはロブスタ種の相場推移で、単位はセント/トン(右軸)です。
$・・・ドル t・・・1,000kg
アラビカ種とロブスタ種とは?
コーヒー関係者の方ならご存じかとは思いますが、なぜかこの記事に迷い込んでしまった方のために、
この2種類について以下の表をもって簡単に説明を。
コーヒーは2つの品種に大別されており、風味特徴も全く違います。
アラビカ種はブレンドせず単一で使用されたり、ブレンドのベースとして使用されることが多いです。
ロブスタ種はアラビカ種よりカフェインの含有量が2倍ということもあり、濃厚感と苦味が
強いです。ただし、アラビカ種のような酸味や香り、クリアーな質感はありません。
ロブスタ種100%で販売されている商品は稀で、アイスコーヒー用のブレンドに一部加えることで
濃厚感を出したり、ブレンドの一部に加えることで全体的なコストダウンを図るために使用されます。
これまではアラビカ種とロブスタ種には上記のような価格差があったのですが、
後程この価格差が無くなりつつある点を説明したいと思います。
霜害発生 減産が確定的に 2021年7月
ブラジルでの減産懸念による相場上昇の最中、2021 年7 月に産地が凍結する「霜害」が発生。
この霜害によって2021 年度産だけではなく、2022 年度産の生産量が10% 減少することも
確定的になったため、コーヒーの相場価格は30% 近く急騰します。
例年4月~8月はコーヒーの相場が上がりやすい傾向にあります。これはブラジルのコーヒー収穫が
4月末頃から開始し、「収穫が思っていたより遅れている」、「収穫中に降雨が激しく品質懸念が・・・」
といった収穫量に影響を及ぼしそうな不安材料が出やすいためだと思います。
弊社ではこのような事情から翌月の2021年8月には1回目の値上げを実施させて頂く事となりました。
価格高騰要因が絡まり合う・・・ 2021年10月
霜害による減産懸念でアラビカコーヒー相場価格は150¢/lb から200¢/lb に突入。
さらには「コロナによる流通用のコンテナ不足、流通遅延」、「コロンビアでの減産懸念」
「エチオピア内紛による供給不安」、「ウクライナ侵攻によるエネルギー問題、肥料価格上昇」
といった様々な要因からアラビカコーヒー相場価格は一時250¢/lb まで上昇。価格高騰前の
2021 年7 月当初からすると40% 以上も相場価格は上昇しました。
泣きっ面にハチとはまさにこのこと。コーヒーを販売する各社が2021年の7月から8月にかけて値上げを
実施いたしましたが、相場の高騰は止まらずさらなる値上げを余儀なくされたところもあると思います。
円安傾向による輸入品の値上がり 2022年3月
現在も続く円安は2022 年3 月中頃からはじまりました。主な原因は日本とアメリカの金利差に
よるものです。長らく金融緩和政策をとってきた日本とアメリカでしたが、アメリカは金融引き締めを
行い日米での金利差が大きくなり円を売って、ドルを買う動きが強くなり円安は進行しております。
この円安状況から2022年9月には2回目の値上げをお願いすることとなりました。
コーヒーだけではなく、様々な輸入品が値上げになったのは記憶に新しいのでは
ないかと思います。
ロブスタ種減産による相場高騰 2023年3月
ロブスタ種の主要生産国であるベトナム、インドネシアでは天候不順によって、年々生産量が減少。
また産地でのコーヒー栽培から、他食物への栽培転換も行われているようで今後も生産量が
減少することが懸念されております。これまではアラビカ種の60% ほどの価格で取引されてきた
ロブスタ種ですが、現在はアラビカ種の価格を上回るほどの最高値に。
両種高騰、円安でさらなる価格高騰 2024年1月
2024 年1 月以降、ロブスタ種の価格上昇によってアラビカ種も価格が上昇し、生産者は
「より高値で売れるのではないか?」と販売を渋っていることから供給が不足し、相場価格は
さらに上昇、また円安も歴史的水準となっており、コーヒーの取引価格は過去最高値といっても
過言ではないほどに上昇しております。
このような状況から3度目の値上げをお願いせざるを得ない状況となりました・・・。
流通問題によるアフリカ産コーヒーの高騰
コーヒーの相場は前述の通り、生産量、天候、経済状況、情勢によって変わりますが、
流通による問題で価格が上昇するという事態が発生しています。
イスラム組織ハマスと連携するイエメンの反政府勢力フーシ派による紅海での船舶攻撃が
止まらず、アフリカ最南端の喜望峰ルートへの迂回を余儀なくされています。
この問題はコーヒーだけではなく世界的な流通遅延を引き起こしています。
これまでエチオピアで生産されたコーヒーはアデン湾にあるジブチ港よりコーヒーを
輸出していましたが、紅海ルートを通る船舶が襲撃されていることで紅海ルートを使用することが
難しくなりました。現在もこの攻撃は続いており、紅海ルートの使用は例年の70%減少しているそうです。
また、危険を顧みず紅海ルートを使用したとしても、襲われるリスクがあるので保険料が増加し、
襲われるリスクを回避するために貨物を途中で小さな船に分けたりするために物流費が高騰しています。
迂回ルートとして、アフリカ最南端の喜望峰を回るルートがありますが、
これまでヨーロッパからの流通を担っていた紅海ルート分の貨物をカバーできるわけもなく、
世界的な流通遅延、コンテナ不足、価格上昇が顕著になっています。
こういった事情からアフリカ産コーヒー、特にエチオピアのコーヒーは価格が大きく上昇しています。
相場状況による生産者の状況
長々と相場変動、円安による価格の高騰について述べてきました。
相場高騰によって生産者の売り渋りが発生している という状況を記載しましたが、
どれぐらいの相場感なら生産者はどのような状況なのか を説明します。
これは前職の生豆商社に勤めていた頃、各国の生産者に聞いた内容をもとにしていますが
アラビカ相場が○○¢/lbならどういうモチベーションなの? というものです。
※上記の生産者っぽい写真は「コーヒー相場 高い 生産者 大歓喜 ウハウハ」という
条件でAIに作成させたものですので、実在する方々ではございません。
100¢/lb以下・・・コーヒーなんか生産しとる場合ちゃう!他の果物・野菜に切り替えないと赤字
150¢/lbほど・・・適切な肥料、収穫、精選処理ができ、継続的に品質が守れそう。
200¢/lb以上・・・これなら来期の生産量を増やしていい!増産にむけ投資するぞ!
120¢/lb台であってもコーヒー栽培で儲からない生産者はいます。
コーヒーの樹が強い日差しに直接さらされないように植えられる木を
「シェードツリー」というのですが、相場価格が低いと以下の様な状況が発生します。
生産者「品質向上のためにシェードツリーとしてバナナを植えよう!」
⇨品質向上!しかもバナナも美味しい!もっと植えよか!
⇨おぅ!バナナも売れるやん!二毛作になっちゃった!
⇨あれ、もしかしてバナナのほうが儲かる・・・??
⇨当農園はこれよりバナナのみを生産する!!
こういった流れでコーヒーの生産から他の果物や野菜の栽培に切り替えている生産者は
少なくないそうです・・・。特にインドネシアとベトナムでこういった話をよく耳にします。
中国でのドリアンブームを受けて、ベトナムではドリアン栽培への転換が進んでいるそうです。
また200¢/lb以上になったからといって全ての生産者がウハウハというワケではないです。
私が話を聞いているのは小規模農園から集めたコーヒーをまとめて処理するバイヤーや、
大農園主なので、コーヒーを1粒ずつ収穫するピッカーにはそこまでの恩恵はないと思います。
今後の相場動向は・・・
先日めざましテレビの取材を受けた際にも申し上げたのですが、本当にわかりません・・・。
知っている情報を整理すると、
良い情報
ブラジルでの収穫状況は順調!
世界的な在庫数は上昇傾向にある!
悪い情報
ベトナムで降雨が足りていない!
エチオピア産コーヒーがイラン・イスラエル問題から船積み遅れ
ということぐらいで、投機筋による売買が相場を動かしている展開です。
ネガティブな話で申し訳ないのですが、ベトナムの生産量減少懸念からも価格が上がる
要因が多いのではないかと考えています・・・。
以上、2021年からの相場動向についてまとめさせていただきました。
はやく 相場が下がっています! という記事を書きたいものです・・。
ここまでご覧いただきまして、誠にありがとうございます。