コーヒー豆の仕入れ方|カフェ開業前に知るべきポイント【大阪老舗ロースターが解説】

アラブ珈琲の西埜元成です。当社では大阪市北区にて 焙煎豆・生豆の業務用卸、ドリップパックOEM、小ロットからのオリジナルブレンド提案 を行っています。
今回の記事では、これからカフェを開業される方または すでに営業中で “仕入れ先を見直したい” と感じている方 に向けて、コーヒー豆を仕入れる際に どんな基準で選べば失敗しないのか を、1962年より運営している老舗ロースターの視点でわかりやすくお伝えします。
目次
そもそもコーヒーにこだわる必要があるのか?

カフェを開業しようと考えたとき、まず悩むのは「お店のコンセプト」や「何を強みにするか」です。コーヒーを主役にするお店であれば、使用する豆の種類や焙煎度、提供スタイルまで明確にイメージされていることが多いでしょう。しかし、フードをメインとするカフェの場合、どうしても優先順位は内装 → メニュー開発 → オペレーション → 食材仕入れと続き、コーヒーのことは後回しになりがちです。その結果、
『あ・・・コーヒーどうしよう・・・』
という状態にオープン直前に慌ててご相談をいただくケースも珍しくありません。
食事メインの店ほど、『コーヒーの印象』が残りやすい

フード中心のお店であっても、食後のドリンクとして注文されるコーヒーは少なくありません。そして不思議なことに、食後のコーヒーの印象が、そのお店全体の満足度を左右することがよくあります。『料理は良かったけど・・・コーヒーはイマイチ』『最後のコーヒーも美味しかった!』などなどこういった口コミは多々あり、せっかく好評だった料理の印象がコーヒーの出来次第で一変してしまうこともあります。これは私がコーヒーを購入してほしいから言うのではなく、シメのラーメンぐらい重要な役割をもっているのです。
業態別のコーヒーの役割と考え方
カフェといっても幅広いですが、業態によってコーヒーの位置付けは大きくかわります。ここからはこれまで弊社が納品してきたお客様の実体験に基づいて、何が求められて、何に重きを置くべきなのかを業態別に解説いたします。
コーヒー専門店の場合|品質と専門性が重要

コーヒーを主役とする専門店の場合、品質と専門性こそがお店の看板 となります。お客様も「この店はコーヒーを飲みに来る場所」という認識を持って来店されるため、一般的なカフェよりも 品質・種類・味の安定性への期待値が高い のが特徴です。専門店で求められるポイントとしては、
- ブレンドのこだわり
- スペシャルティコーヒー
- 焙煎度合いのバリエーション
- 飽きがこないラインナップ
- 抽出方法のこだわり
- 味の違いを説明できる専門知識、言語化能力
などなど専門店では、品質×種類×情報力(説明力)を高めることで、他店との差別化がより明確となります。実際に人気の専門店は、コーヒーそのものの品質を通じて、『ここでしか体験できない味わい』や『学びのある時間』をお客様に提供しています。
スイーツ店の場合|コーヒーは引き立て役。だから重要。

スイーツを中心に提供するお店の場合、コーヒーは主役というより “スイーツを引き立てるパートナー” のような存在です。そのため、コーヒーだけで勝負する専門店のように種類を増やしたりする必要はありません。しかし、だからといってコーヒーの質を軽視すると満足度が下がりやすいのもスイーツ店の特徴です。
スイーツと一緒に提供されるコーヒーが『薄い』『苦いだけ』『酸味がキツイ』などの状態だと、せっかくのこだわりスイーツの印象が弱くなってしまいます。スイーツ店で求められるコーヒーのポイントは以下の通りです。
- 酸味が強すぎず、風味を邪魔しないバランス
- ミルクとの相性がよい焙煎度合
- 香りと甘さの相性が重要
- 『スイーツに合う理由』を説明できる程度の知識
スイーツ店の場合は『スイーツの個性を引き立てながら、単体としても満足できるコーヒー』というバランス感覚が重要になります。たとえば濃厚なチョコレートケーキに焙煎度合いの深いビターなコーヒーを組み合わせるより、あっさりとした中煎りのコーヒーのほうが相性が良いケースもあります。
同系統で合わせるのか、相反する特徴で対比を作るのかは難しいポイントですが、実際に人気のスイーツ店では 「スイーツ+コーヒー」そのものが来店動機となる ことも多く、セット提供の満足度がリピート率と客単価に直結します。
モーニング、ランチ中心のカフェの場合|“作業性 × 安定性” が鍵

モーニングやランチ提供がメインのカフェでは、お客様の来店が特定の時間帯に集中するため、コーヒーの役割は「食後の定番ドリンク」や「セットドリンク」になる ことが多いです。この業態では、専門店のような「味の追求」よりも、“安定供給・作業性・回転率” が圧倒的に優先される のが特徴です。とはいえ、コーヒーの質を下げると食後の不満を招き、総合的な満足度を損ねてしまいます。モーニングやランチ中心のカフェでおさえておきたいポイントは以下の通りです。
- 味のブレが出づらい中深煎りが安定ライン
- 誰でも淹れられる『簡単オペレーション』
- 提供までの時間が短いこと
- 万人ウケの良いバランス型の味わいであること
モーニングやランチのピーク帯は『いかに早く・安定した味を・誰でも提供できるか』が売上と回転率に直結します。そのため、ランチやモーニング中心のカフェでは『尖った浅煎り』よりも万人に飲みやすい中深煎りぐらいの焙煎度合のコーヒーがベストになるケースが多いです。また、ランチ客は食後のコーヒーに特別な一杯を求めてはいませんが、
- 苦味だけが強い
- 焙煎度合いが浅くて酸味が強い
- 味わいが薄い
こうした味わいのコーヒーは満足度を下げやすく、反対にしっかり美味しい食後の一杯を提供できるお店は、客単価の底上げや口コミ評価につながりやすい傾向にあります。さらにランチやモーニングの時間帯でも一杯ずつハンドドリップで提供するお店も少なくありません。これはこれで、丁寧さやコーヒーのこだわりを大切にするスタイルです。
結局のところ、機械でまとめて抽出して保温して受注時に即座に提供するのも、1杯ずつ抽出してこだわりのコーヒーを提供するのもどちらも正解。
大切なのは『自分のお店のコンセプト・販売価格・人員体制にみあったオペレーション』かどうかです。そのうえで安定した美味しいコーヒーを提供できればどちらの方式でも十分魅力的なサービスとなります。
ベーカリーの場合|パンの香りと調和する“相性重視”のコーヒー

ベーカリーやパンを中心に展開するカフェでは、コーヒーは主役ではなく「パンをよりおいしく感じさせる相棒」 のような存在です。そのため、コーヒー単体で強い個性を出す必要はありませんが、パンの風味を引き立てる“相性の良さ”が非常に重要になります。
ベーカリーで求められるコーヒーのポイントは次の通りです。
- 小麦の香りを邪魔しない中煎り~中深煎り
- 食パン・惣菜パンなどに合うバランス重視の味
- ラテ需要が高いため、ミルクと相性の良い焙煎度
- 朝のピークに対応できる簡単オペレーション
パン屋さんはモーニング需要が高く、『パン+コーヒー』の組み合わせで来店するお客様が多いため、パンの味わいと相性の良いマイルドな味わいのコーヒーがおすすめです。
ベーカリーのピークは朝に集中しやすく、パンの製造をしながら、接客もこなし、コーヒーの提供を行うのはかなり対応に時間を要することから、ハンドドリップや複雑な抽出方法よりも誰でも安定した味わいが出せる抽出方式が向いています。
ただ一方で『パン屋なのにコーヒーが意外と美味しいぞ』というギャップがさらなる差別化につながる場合もあり、こだわった1杯を丁寧に抽出するベーカリーカフェが増えています。
つまり、『パンの味を邪魔しない合わせるコーヒーを選ぶのか』、『ベーカリーの新たな魅力としてコーヒーを打ち出すのか』どちらを大切にするかで、抽出の方法が変わります。どちらの方向性も正解であり、やはり大切なのはお店のコンセプト・客層・オペレーションに合った選択をすることです。
もうひとつの選択肢『オリジナルドリップパック』という方法

パン屋さんの場合、『忙しくて抽出に時間がかけられない・・・。』『でもコーヒーは提供したい』という声も良く頂きます。そんな時に喜ばれるのがお店専用のドリップパックです。お店で抽出ができないのであれば、お客様に抽出して頂く!というスタイルです。
- お客様に抽出していただくので手間いらず
- ノベルティや物販としても使える(売上アップ)
- ご自宅で飲む場合はむしろ喜ばれる場合も
このようなメリットがありますので、コーヒーを軸にしないベーカリーでも導入が容易です。我が社でも小ロットからオリジナルドリップパックの作成が可能ですので、『抽出して提供はできないけれど、こだわりあるコーヒーの提供をしたい』というベーカリー様にご利用いただいております。
【まとめ】業態によって“最適なコーヒー”は変わる。
ここまで解説してきたように、コーヒーの最適解は「お店の業態」や「提供スタイル」によって大きく変わります。
- コーヒー専門店なら“品質と専門性”
- スイーツ店なら“引き立て役として
- ランチ中心店なら“作業性と安定性”
- ベーカリーなら“パンとの相性”
それぞれに求められるポイントは異なり、『この豆を選べば正解』という単純な話ではありませんが、業態に合わせてコーヒーの取り扱いや抽出方法を最適化することによってお店の価値を最大限に引き上げられるということでもあり、コーヒーにはその価値と魅力があると私は考えています。
アラブ珈琲では、業態に合わせた“最適な一杯”をご提案できます
アラブ珈琲では、コーヒー専門店からスイーツ店、食事中心のカフェ、ベーカリー、自家焙煎店まで、さまざまな業態の店舗様への焙煎豆のご提案、仕入れのサポートを行っております。
- まずは『お店のコンセプト』
- そして『客層』『価格帯』『席数』
これらを丁寧にヒアリングしたうえで、そのお店にとって最も使いやすく、継続しやすく、利益につながるコーヒーのご提案を抽出方法やオペレーションを含めてご対応いたします。また、
- オリジナルブレンドの作成
- オリジナルドリップパックの作成
- 業務用コーヒーの切り替え相談
- スタッフに向けたセミナー(コーヒーインストラクター3級講習会)
なども可能です。『なんとなく仕入れているコーヒー』をお店の強みになるコーヒーに変えるお手伝いをさせていただきます。
まずはお気軽にご相談ください
- 開業を控えているが、どんな豆を選べばいいかわからない
- 今の豆を変えたいんだけど、どこから選べばいいの?
- お店にあったコーヒーの提案、抽出オペレーションを提案してほしい
- オリジナルブレンドやドリップパックを作成したい
あなたのお店にとって、『ちょうどいいコーヒー』を一緒に考えます!お気軽にお問合せくださいませ。
投稿者プロフィール|Author profile

- 西埜元成営業部 部長
-
アラブ珈琲株式会社の西埜元成(にしのもとしげ)と申します。
高校生の頃からコーヒーに関わる仕事を始めて早20年。
焙煎豆の挽き売り、生豆商社での経験を活かして生豆販売、
焙煎豆商品の商品設計、焙煎豆製品の製造管理、
自家焙煎店への生豆販売や焙煎サポート 等々コーヒーに関係する
業務に従事しております。
コーヒーに関係する質問や、お店の開店、焙煎方法等で質問ございましたら、遠慮なくご連絡ください。




