自家焙煎店によく聞かれる① 包装資材ってどうすれば?
コーヒー生豆を販売するようになってから約15年が経ちました。生豆を販売する中で新規開店に
携わったり、200店舗近い自家焙煎店を担当してきましたので、資材に関してよく聞かれることを
本記事にまとめていこうと思います。
「オリジナルブレンドの内容も決まって、単体販売するコーヒーも決まった!!
あ、でもお客様にお渡しするための包装資材はどうしよう・・・。」というオーナー様も多かったです。
これから自家焙煎店をOPENしたいという方、既にOPENしている方に少しでも参考になればと思います。
目次
コーヒー販売用資材に関して
包材の形態色々あるけど、どれがいいの?とよく聞かれることがあります。
各包材形態のメリット・デメリットを把握してどの資材を用いるか選択しましょう。
ピロー型(枕型)
枕のような形をしていることからピローと呼ばれます。袋にマチがないので自立できないため
陳列性は良くないですが(立たせて並べようと思うと倒れやすい)、厚みが重要になる
メール便に用いるには使用しやすいです。
使用するプリンターによっては家庭用でも本資材に直接印刷が可能ですので、
ドリップパックにプリンターでロゴ等を直接印刷するためにプリンター購入を検討しているかたは、
本資材の印刷も対応可能か確認しておくと良いと思います。
※結構本格的な大型プリンターだと、印刷時に熱がかかってしまい包材のシーラントが溶着されて
印刷できたけど開かない! なんてこともあるので注意が必要です。
ガゼット型(マチ付き)
マチがあるので、底部ができるため自立しやすい形態です。
ただし、マチが短い場合や充填するコーヒー量が少ない場合は自立できないので要注意です。
底部を作らなければピロー型のような使用方法もできます。
角底型
底がしっかりできあがった状態の包材ですので、自立できます。マチの短いガゼット型より
確実に自立できるので陳列性がいいです。ただし、価格はちょっと高めになります。
スタンドチャック型
底部があるので、自立が容易です。また袋上部にチャック部があるので、
他資材に比べると保存性が高く、そのまま保管できることも喜ばれます。
ただその分価格は高いです。
包材形態のまとめ
まとめるとこのようになります。自家焙煎店の場合はほとんが挽き売り(お客様の目の前で充填して渡す)
というスタイルで、お客様の大半が購入したコーヒーをすぐ消化するであろう前提なので、過度に価格の
高い包材を用いて販売する必要はありませんが、包材の利便性・バリア性があるのは喜ばれます。
ドリップパック用の資材に関して
コーヒー豆、粉商品に比べて手軽に本格的な抽出が楽しめるドリップパック。
コーヒーの粉を充填する内袋(不織布部分)、内袋を充填する外袋が必要になります。
内袋(不織布部分)の形態は主に3種あり、使用する形態によって味わいの傾向が
若干異なるので、その点に留意して資材を選択しましょう。
浸漬型(漬け置き型/カップIN型)
カップの中にセットしてお湯を注ぐタイプです。カップの中で粉とお湯が接触し続けるため
濃い味わいになりやすい反面、接触時間が長い分雑味やエグ味が出やすい傾向にありますので、
クリアーで繊細な味わいが特徴のコーヒーに用いる場合は注意が必要です。
ドリップ型(カップON型)
カップの上にセットしてお湯を注ぐタイプです。ペーパードリップに近い形で抽出できるので
クリアーで繊細な味わいが抽出しやすい特徴がありますが、お湯との接触時間が短いので浸漬型(カップIN)に
比べるとあっさりとした味わいになりやすいので、濃厚感を求められる味わいのコーヒーに
用いる場合は注意が必要です。
ディップ型(完全浸漬型)
紅茶のティーバッグのような形態をしたドリップパックです。
(ドリップしてるのか?と言われると困るのでツッこまないでください)
外袋から出して、カップに入れて、お湯を注ぐだけ!というとても簡単な抽出方法です。
1人分の完全浸漬型では三角メッシュを用いたものが多いですが、このメッシュは
コーヒー粉に含まれる微粉を抽出液体中に少量通過させてしまう為、粉っぽい味わいや
雑味のある味わいが出やすくなってしまう傾向にあります。
ドリップパック形態まとめ
ドリップ資材についてまとめました。市販品ではカップONタイプも増えてきましたが、自家焙煎店の
お客様が作成されているドリップはカップINが多いかなと思います。
シーラーに関して
豆・粉用包材、ドリップ用包材について簡単に説明してまいりましたが、これの包材から
豆・粉がこぼれないようにするには包材を溶着(ヒートシール)する機械が必要になります。
包材を選ぶ際には包材がシーラーに対応しているかどうかも確認する必要があります。
(ほとんど、対応していますが念のため)ヒートシールが可能な包材には包材の一番内側に
シーラント層と呼ばれる素材としてポリエチレン(PE)やポリプロピレン(CPP)が構成されています。
シーラーは色々と種類がありますが、迷ったら幅広なタイプを選べばよいと思います。
スタンドチャックの袋を使用する場合、横幅が大きいので対応可能です。
溶着時に袋内を脱気するシーラーもありますので、袋に充填後長期保管することを考えている方は、
品質保持の観点から脱気機能があるシーラーも選択肢にいれてよいと思います(高いけど・・・)
ドリップパック内袋は豆・粉用包装資材よりも低い温度設定で溶着しないと溶けてしまうため、
温度調整機能があるシーラーを推奨致します。
ガス対策手段
コーヒーは焙煎後ガスを放出します。焙煎度合や保管する温度によってガスを放出する期間はかわりますが、
焙煎したてのコーヒーを充填して販売する場合には、包装資材にガスを放出する機能が必要になります。
この機能が無いと、包装資材がガスの放出によってパンパンに膨らんでしまい、
破袋(ハタイ)する可能性があります。
焙煎したてのコーヒーを販売してます と謳ったものの、ガス対策をしなかったがために、
「冷蔵庫のなかで爆発音したかと思ったら袋が破裂しとるやないかー!!」 とか
『袋開封したら粉が飛び出てきて、数g無駄になったのよ!!プン!』 というご指摘を受けるかたも
いらっしゃるので、販売する形態に応じてガス対策は行いましょう。
※ガスに対応する為の機能は各社独自の呼称がありますので、
それらの呼称を使用することは避けたいと思います。
ワンウェイバルブ
ガス放出による袋内の内圧上昇に応じて、ガスを放出する機能があります。
内部からガスが出ていく一方、外部から酸素を吸い込まないため、ガスの放出が終わった後も
内部はガスで満たされた状態になるため、品質保持性が高いです。ただ、その分価格もたかいです。
容量の多い商品や、長期にわたっての使用や保管が考えられる場合にはおススメです。
ガス排出機能付き袋
ガスの放出に伴い、袋内の内圧が上昇するとガスを放出する機能がありますが、外部から酸素を
吸い込んでしまうので、ガスの放出が終わったら少しずつ酸素を吸いこんでしまいます。
長期にわたる保存には向いてないですが、お客様がすぐ開封して使用する場合や、他容器に
移す前提であれば十分な品質保持性はあります。価格も比較的安いです。
エージングしてから充填
上記のようにガス対策を包材で行わない場合は、ガスの放出が完了しきったエージングされた状態の
コーヒーを袋に充填するというガス対策方法もあります。この方法であれば単価の安い包材で済むのですが、
ガスの放出とともに香気成分も消失してしまうので、「焙煎仕立て!」「新鮮!」「香り高い!」という
フレッシュさを謳うことは難しくなります。
ガスの対策をしている=新鮮なコーヒーを販売している ということですので、できればガス対策機能がある
袋で販売したほうが品質的にも、客観的にもいいと思います。特に最近の消費者様はこういったことにも
かなり知見があるので注意が必要です。
ただし!ドリップパックのような小容量品の場合、小容量の各包材にガス対策包材を用いると
単価があがってしまうので、ドリップパック商品の場合には焙煎してから1,2日経過したものを
粉砕して、粉を充填するようにしてください。
市販品はどういう対策をしてるの?(賞味期限根拠)
少し脱線しますが、スーパーマーケットに並んでるような「レギュラーコーヒー」と呼ばれる商品は
どのような品質保持がされているかお話します。大手メーカー様の場合だと、包材はワンウェイバルブ、
充填前に袋内の酸素を追い出し、炭酸ガスの発生を緩和させるために窒素ガスを充填した状態で密封します。
製造時検査では袋内の残存酸素濃度を計測する機械にて袋内の濃度を計測しており、
〇.〇%以下じゃないと出荷できないといった非常に厳しい規格を設けています。
レギュラーコーヒーの袋商品の賞味期限は12~18カ月とされており、12カ月の設定が多いですが
上記のような品質保持対策を行った上、遮光性・防湿性・ガスバリア性の高い包材を使用しての
12カ月設定ですので、ただ焙煎したコーヒーを袋に充填、ヒートシールしたものに賞味期限を
1年間設定するのは難しいですし、実際飲んだら劣化していますので、新鮮さをウリにするべき
自家焙煎店では1~3か月ぐらいの期限設定を推奨いたします。
資材の材質に関して
資材の形態やガス対策に関して記載してまいりましたが、資材に用いている材質自体にバリア性や防湿性が
なければ袋内での劣化はすすむので、袋に入れた状態で一定期間保管するのであれば
材質も確認しておきましょう。
詳しくはコーヒーの資材を取り扱う ニコノス様のHPに記載されていますので、ご覧ください。
https://www.niconos.co.jp/characteristic/material
資材に関して まとめ
以上、お客様からよく問い合わせを受けるコーヒー資材に関してでした。自分の使い勝手や、お客様に
どのようにして使用頂きたいのか、どれぐらいの賞味期限を設定するのかによって選択しましょう。
「この包材だったら賞味期限ってどれぐらいですか?」という質問をよくいただきますが、
なにをもって美味しく飲める期間とするのかを決めれるのは製造者だけです。
自分で製造した商品の品質に責任をもって、賞味期限を設定しなければなりません。
包材に焙煎後1か月、2か月、3か月経過したものを準備し、経時変化による風味の差があるかを確認し、
結果、3か月以降の商品に関しては1か月のものに比べて風味差が感じられたので、2か月に設定する
といった実証に基づいた賞味期限設定が必要です。「他が3か月だからウチもこれでいっか~」では駄目です。
購入されるお客様にとって利便性があって保存性もある包材がベストですが、その分単価もあがるので、
販売する金額と、お客様のニーズに合わせて包材をセレクトしてみてください!
ここまでご覧いただきありがとうございました。