コーヒー生豆のハンドピックとは?欠点豆の種類と見分け方・効率的な選別方法

本記事をご覧頂きありがとうございます。大阪で1962年よりコーヒーの業務用卸(生豆・焙煎豆)、小売り製品の製造をしておりますアラブ珈琲株式会社の西埜元成と申します。
本記事では自家焙煎店様やご家庭で焙煎を行う方によく聞かれる『コーヒー生豆のハンドピック』に関して、何を取り除くべきなのか?どういう影響があるのか?どこまでやるべきなのか?どうやってやるべきなのか?をまとめました。
目次
ハンドピックとは何か?
コーヒー生豆には一定量の欠点豆と呼ばれる風味や外観に影響を及ぼす豆が混入しています。コーヒーは農産物である以上混入を完全に防ぐことは難しいです。
そのため、焙煎を行う前に欠点豆を取り除く『ハンドピック』という作業を行うことで、生豆が本来持っている風味をより引き出すことが可能になります。
なぜハンドピックが必要なのか
主な理由は3つございます。
① 味の悪化を防ぐため
欠点豆が混入していると、発酵臭や薬品のような異臭、強烈な酸味やすっぱ味といったネガティブな酸味、渋みや苦味の原因になることがあります。そのため、これらの欠点豆を取り除くことは、コーヒーの品質を保つうえで重要な作業となります。
② 焙煎ムラを防ぐため
欠点豆は、焙煎しても色づきにくかったり、形状や密度が異なるため焙煎の進行度合いが変わることがあります。その結果、焙煎の均一性が損なわれる場合があるため、事前に取り除くことでより安定した焙煎が可能になります。
③ 異物混入を防ぐため
また「欠点」は豆だけを指すものではなく、以下のような異物も含まれます。
- 石
- 枝
- 紐
- パーチメント
- ドライチェリー
- コーヒーじゃない豆
- とうもろこし
コーヒー以外のものは総称して「異物」と呼ばれますが、これらが生豆に混入することは決して珍しいことではありません。例えば、生豆の乾燥場に使われているレンガの破片(エチオピアなどで見られることがあります)や、麻袋の紐を切るためのナイフ、現地の貨幣が混入していた事例もあります。
コーヒーは基本的にペーパーフィルターなどで濾過して飲むため、これらの異物が混入していたとしても直接的な人体への危険につながるケースは多くありません。しかし、石などの硬い異物が混入していると、粉砕時にミルを破損させる可能性があります。
上記の理由から焙煎前にハンドピックを行い、欠点豆、異物を取り除くことが望ましいといえます。
欠点豆の種類と影響
では次に実際にどのような欠点豆があり、それぞれがどのような影響を与えるのかを見ていきます。種類によって影響度が異なりますので、影響度が高いものと、低いものを分けて説明いたします。
影響度が高いもの

以下の欠点豆は混入すると、とてもわかりやすく風味に影響を与えます。私の経験即ですが、10gに1粒ほどであれば明確にわかるレベル、50gに1粒でもかなりの影響、100gに1粒で違和感が生じる程の影響があります。
・黒豆

地面に落ちたチェリーを拾うと土壌菌の影響で変色したり、病害や虫による被害や、収穫後の保存状態が悪い、精選までの時間が長いと腐敗しこのような状態になります。
混入すると、強烈な酸味や苦味、異臭を発生します。異臭のバリエーションは色々とあるのですが、お腹が痛くなった時にのむ薬の香りや、プールを消毒する塩素の香りがしたりといずれも強烈です。
・発酵豆

樹上で過熟しすぎた過熟豆や、精選中に水分過多状態が続くとこのような状態になります。
強烈なスッパ味や、酸味、フルーティを通り越した鼻をつんざく異臭が発生します。
炊飯器の保温ボタン押し忘れて、そのまま放置しちゃった時の変色したお米です。あの蒸れてて酸っぱいニオイ強烈ですよね。うっ!想像しただけでちょっと嗚咽が・・・。
・カビ豆

精選段階や、生豆保管中に水分過多状態が続いたり、輸送中のコンテナ内の結露によって発生します。混入すると、カビ臭や濁った風味が発生します。
カビ臭は湿った紙とか、土のにおいがします。偏見ですが、安価なホテルの浴室内のカビカビのカーテンに近いニオイがします。
影響度が低いもの

以下は、混入していても少量であれば風味への影響が比較的小さい欠点豆です。ただし大量に混入すると、コーヒーの味に影響を及ぼす可能性があります。先に挙げた3種類の欠点豆は風味への影響が大きい一方で、外観から比較的判別しやすい特徴があります。
それに対して、以下の欠点豆は風味に与える影響が少ない割には判別し辛く、ハンドピックに時間がかかりやすい傾向があります。もちろん取り除くに越したことはありませんが、判別の難しさや作業時間を考慮すると、どこまでを許容するのか一定の基準を決めておくことも重要です。
・未成熟豆

完熟していない豆を収穫したり、生育不良だった生豆がこの状態になります。焙煎しても色づき辛く、きなこの様な香りがしたり、渋みを発生させます。未成熟豆は意味異臭や味を壊すというよりかは『風味を弱くする』タイプの欠点で、10gに1粒入ったとしても感じ取れる人は少ないと思います。
メタリックなシワがよっていたり、薄皮がギュっとなっているものが多く、正常品に比べると小粒になりがちです。見た目で判断するのが難しいのですが、焙煎をすると『色づかない』特徴がありますので、『これ未成熟豆かな??』と悩むぐらいなら、焙煎してから取り除くことをおすすめします。
・虫食い豆

生産中に果肉に入り込んだ虫や、保管中や輸送中に虫によって食われることで発生します。風味に与える影響は少ないのですが、虫食い豆は黒豆、発酵豆、カビ豆を併発している可能性があるので、除去するにこしたことはありません。
虫食い豆の大半が『コーヒーベリーボーラー』といわれる小さな虫です。『じゃあ虫が中にいるんじゃないのォ!!?』と思われるかもしれませんが、虫が残っているものは見たことがありません。なぜなら、
- 1 メスの虫がコーヒーチェリーに穴をあける
- 2 豆の中に入り卵を産む
- 3 幼虫が豆を食べて成長
- 4 成虫になって外へ出る
つまり、豆の中で生活して最後には外に出ますので、中に残っていることはほぼありません。仮に残っていたとしても、精選工程や、生豆の選別工程で除去されています。
外観による気持ち悪さは少しございますが、風味に与える影響は少ないです。ただ、中に虫が残っていると勘違いされるのも嫌なので、除外できるなら除外したい欠点豆です。
・欠け豆、割れ豆

収穫や精選工程中、輸送中に踏まれたり、挟まれたりすることによって発生する欠点豆です。割れたり欠けたりすると小さくなってしまうので、焙煎がこの豆だけ早く進行することとなりますが、混入したとしてもその影響度はひじょうに低いです。
取り除くに越したことはありませんが、大きな影響はありません。
・潰れ豆

欠け豆同様、生産工程中や輸送中で踏まれたり、挟まれたりすることで発生します。こちらも焙煎進行度に影響しますが、その影響度は非常に低いです。
・古豆

生産後に数年経過、長期間の保管や、不適切な保管条件で白く変色してしまった豆。焙煎しても色づき辛く、香りや風味が弱いです。これも混入時の影響度は低いですが、ハンドピックの最中に明らかに白っぽくなっている豆を取り除くぐらいの感覚でいいと思います。
生豆ハンドピックのやり方
具体的にどのような手順でハンドピックをすればよいか説明いたします。ハンドピックをなるべく効率よく行うにあたり、以下のようなものがあれば便利です。

左側の画像のような、生豆鑑定用のシートを「クラシフィケーションシート」といいますが、生豆が見やすくて、丸められるような柔らかさがあれば何でもOKです。A3用紙でも十分です。
画像右側の園芸用ふるいがあれば、小さな異物や、欠け豆を取り除くことができるので作業効率が高まります。ホームセンター等で¥3,000もあれば購入できると思います。
欠け豆、小異物などの除去

1.ふるいに生豆を投入
ふるいから粉や欠け豆が落ちるので、下にシートを敷いておいてください。画像の生豆はブラジルNo.2 17/18 300gです。

2.ふるいを縦・横に動かす
ふるいを縦方向、横方向にそれぞれ5秒ほど揺り動かせば、5mmに満たない欠け豆や、粉などが落ちてきます。

3.落ちた豆や粉を除去
落ちてきた豆や粉を除去しましょう。シートがあると右図のように丸めることができて、作業性が良くなります。

ふるいを用いた除去は必須ではありませんが、欠け豆の除去がとても効率的に行えますので、おすすめです。混入しても風味に与える影響が少ないからこそ、時間をかけずに選別しましょう。
ハンドピックの方法
効率よく生豆をハンドピックするために重要なことは『1度見た豆を何度も見ない!触らない!』ことです。全体を見て欠点豆を探すのは非常に効率が悪く、精度も低くなりがちです。効率よく行うには左図のように生豆を置いて、数粒ずつ行うのが理想的です。
ただし!混入時の影響度合が高い、『黒豆』、『発酵豆』だけを除去する場合には、右図のように生豆を展開して明らかに色が違うものだけを取るのもひとつの管理手段です。

ハンドピックの流れ
以下画像のようにハンドピックは少量ずつ行うのが理想的です。

まず生豆の山から一部分だけ(30粒ぐらい?)を取り、この生豆だけに集中して選別を行い、『正常品』と『欠点豆』を分けていきます。分けた後は、作業スペースを確保するために別容器に移し、同じ工程を生豆が無くなるまで繰り返します。
終了後、『欠点豆』と判断した豆を再度確認し、欠点豆に相当するのかを再度確認をしてください。正常品として判断したものは再度確認する必要はありません。再度確認するぐらいなら、選別時に集中したほうが精度も時間効率もいいと思います。
生豆のハンドピックで重要なこと
ここまでハンドピックすべき欠点豆や、その方法について説明してきましたが、作業を行う前に以下の点を意識しておくことで、より効率よく作業を進めることができます。
汎用品とスペシャルティでは欠点豆の混入レベルが違う
ここでいう「汎用品(通常品)」とは、生産国のみが指定されており、特定のエリアや農園までは指定されていない一般的なコーヒーのことを指します。(ブラジルNo.2 17/18 とかコロンビアスプレモとか)
それに対してスペシャルティコーヒーは、エリアや生産者などのトレーサビリティが明確であり、専門の資格を持つ評価者によるカッピングで一定以上の得点を得たコーヒーです。そのため、通常品と比べると欠点豆の混入数は明らかに少ない傾向があります。
価格の高いスペシャルティコーヒーを購入した場合、通常品と同じように時間をかけてハンドピックを行っても、大きな効果が得られないことがあります。そのためハンドピックを行う際には、その生豆の品質レベルをあらかじめ把握しておき、
- スペシャルティは作業時間を短くする
- 明らかに返照している豆のみを取る
といったように、生豆のレベルに応じて作業内容を調整することで、より効率よくハンドピックを行うことができます。
欠点の傾向を知ること
これは私の経験則ですが、生豆の精選方法や生産国によって欠点豆の傾向が異なります。
・非水洗式(ナチュラル)は未成熟豆多め?
ブラジルやエチオピアなどで用いられる精選方法である非水洗式(ナチュラル)は、精選工程において未成熟果実を取り除く工程が水洗式に比べて少ないため、未成熟豆の混入率が比較的高い傾向があると感じます。
一方、水洗式やパルプドナチュラルでは、果肉を取り除く工程においてある程度の選別が行われます。
完熟した果実は果肉を取り除きやすい一方で、未成熟果実は果肉をうまく除去できないことが多く、この段階で一定数が除外されます。
そのため、水洗式やパルプドナチュラルのコーヒーは、ナチュラルと比べて未成熟豆の混入が少ない傾向があります。
・コロンビアマイルドは少なめ
コロンビアマイルドとは特定の銘柄ではなく、国際コーヒー市場で使用されるアラビカコーヒーの分類の一つです。コロンビア、ケニア、タンザニアなどの高品質な水洗式アラビカがこのグループに分類されます。勿論欠点豆がゼロではないのですが、他生産国に比べると比較的少ないほうだと思います。
・マンデリン(スマトラ式)はむずかしめ
インドネシアのマンデリンなどで用いられるスマトラ式(セミウォッシュド)は、乾燥工程が他の精選方法と異なり、水分が含んだ状態の豆を脱殻して生豆を取り出すので水分管理が難しく、割れ豆や欠け豆が比較的多い傾向にあり、独特の深緑色になるので判断が難しいです。
このように、精選方法や生産国によって混入しやすい欠点の種類がある程度決まっているため、その傾向を知っておくことでハンドピックをより効率的に行うことができます。
ハンドピックのまとめ
コーヒー生豆のハンドピックは、欠点豆や異物を取り除き、生豆本来の風味を引き出すための重要な作業です。特に黒豆、発酵豆、カビ豆などは少量でも風味に大きく影響するため、優先的に取り除きたいです。
一方で、すべての欠点豆が同じ影響を持つわけではありません。未成熟豆や欠け豆などは、少量であれば風味への影響が比較的小さい場合もあります。ハンドピックは丁寧に行うことが大切ですが、時間をかけすぎると作業効率が下がり、歩留まりやコストの面で現実的ではなくなることもあります。
また、生豆の品質や精選方法、生産国によって混入する欠点の傾向はある程度決まっています。その特徴を理解しておくことで、どの欠点を重点的に確認すべきかが分かり、より効率的にハンドピックを行うことができます。
ハンドピックは「すべてを完璧に取り除く作業」ではなく、「コーヒーの品質を保ちながら、効率よく欠点を管理する作業」といえるでしょう。生豆の品質や用途に応じて適切な基準を設けながら行うことが、良いコーヒーを作るための重要なポイントです。
本記事をご覧頂きありがとうございました。良ければ以下記事もご覧くださいませ!
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